2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『忠臣蔵 瑤泉院の陰謀』

危うい話である。 吉良上野介がどこから見ても善人で、これが偽装なのか根なのかわからない。高嶋政伸のDQN演技が度を超え始めると、どうかイイ人であって呉れ、と願望混じりなスリラーになる。だから結末はくやしい。

ロバート・ネイサン 『それゆえに愛は戻る』 So Love Returns [1958]

竹内結子は記憶を欠いていて、情報量に著しい制約がある(『いま、会いにゆきます』)。彼女の視点を活用したとしても、情報流出の決壊は起こらない。語り手は、情報を秘匿しながらにして、語りのリソースをそれぞれの人格に分散し希薄化して、風景を分割する…

こころの時代、「司馬さん」との37年(ラジオ深夜便)

福田みどりの天然な性格と夫婦生活のモエ話を愛でるように組まれた構成であった。 司馬にプロポーズされた福田は動揺して「あたしは精神の機械がこわれてる!」と口走る。司馬は司馬で「僕がその機械を直してあげよう☆」と宣う。聞き手のディレクター鈴木健…

トーマス・マン 『ヴェニスに死す』 Der Tod in Venedig [1912]

人格が物語の常識圏から逸脱すると、もはや語り手は彼の心的な詳細を語り得ず、内語の開示は困難になる。たとえ、無理に開示したとしても、情報の信憑性は疑われかねない。しかし、事が恋愛のパワーゲームになると、内語は開示されることで、人格に著しい劣…