2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

やりすぎた純文学はハードなSFと区別がつかない

作家は自分で自分を腑分けして、その臓器の一々に解説を加えるものだと漱石はいうが、では実際に狂いつつある自分を叙述できるかというと、白痴の内心を解析する困難がやはり思い出される。つまり叙述できる狂気は狂気ではない。叙述された狂気はどことなく…

無題

日経平均 12,573.05 ▼ −752.89 (−5.65%) 、-─‐- 、 __ /::::: \ l / ー┼‐″ ヽ , /::::::: ○ ○゙i, ノ ノ 」 ヽ  ̄ ̄ _ノ !:::::::: \___∠_|_____________ . ゙i;:::::::: \,(∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴ ウワァァン! ヽ;:::::: \∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴ l . ヽ、;;_…

情報開示の効果とプロットの損益計算――『大奥』

あらかじめポジティブな顛末を開示しているプロットがそこに至る過程で悲劇を煽ると、スリラーの効果を損ないかねない。たとえば『13デイズ』('00)で海上封鎖に至っても、キューバ危機の結果は自明なのでスリラーの緩和は否めない。本作にしても、吉宗の代ま…

無題

日経平均 13,504.51 ▼ −468.12 (−3.35%) ___ /⌒ ⌒\ ━━┓┃┃ /(  ̄) (_)\ ┃ ━━━━━━━━ /::::::⌒(__人__)⌒:::: \ ┃ ┃┃┃ | ゝ'゚ ≦ 三 ゚。 ゚ ┛ \ 。≧ 三 ==- -ァ, ≧=- 。 イレ,、 >三 。゚ ・ ゚ ≦`Vヾ ヾ ≧ 。゚ /。・イハ 、、 `ミ 。 ゚ 。 ・

ARIA The ORIGINATION

恥ずかしい台詞がやりすぎて、でっかい人生の話に飛躍すると、たかがバスガイドぢゃねえかwww、と興醒めに陥るリスクがある。でっかい人生の当事者にはそもそも恥ずかしい台詞をひねる時間的な担保がない。だからシナリオの課題には、ウンディーネに要求され…

The Wayward Cloud (3)

3. 癲狂院の春 丘の中腹から見下ろす練馬大根の畑は、日にあたる黒猫の淫靡な照り返しのように、陽炎の中を穏やかに揺れていた。樫の木陰に集い、全てを諦め、柔和に笑う影絵のような人びとは互いに無関心で、ただ新鮮な大気と草の香りを物憂げに享受してい…

The Wayward Cloud (2)

2. マトリョーシカ人形 朝の斜光を浴びた冬枯れの往路は薄い水彩画のように褪色していた。消失点へ伸び行くアスファルトの起伏に女体のなだらかな線を感じた私は陶然として目を細めた。日に照らされた緑の街灯も私につかの間の安息を与えたようだったが、好…

The Wayward Cloud (1)

1. 姉と海へ行く 京葉線から望む矮小な海は、高気圧の庇護に気をよくしたのか、化学プラントの配管の向こうから輝度のある反射光を放ち、人びとの網膜を徒に挑発した。漆黒の波が寄せ帰る、カスパールの遣りすぎた宗教画のような曇天の海を望んだ私には当て…

間瀬元朗 『イキガミ』

政治のハイブリッドは、たとえ整合性に欠けるとしても、物語の強度を損なわない限り認められてよい。 たとえば『犬狼伝説』の警察や軍隊関係者は、意地悪で大雑把な言い方をすれば、ナチっぽい格好をしている。ところが、ドイツに敗戦したとされる社会自体は…