2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

広津和郎 『巷の歴史』 [1940]

造形の配分序列をプロットの連結規則に依存させる文芸的な余地は、いちおう認めてもよい。たとえば、情のある浮気者という整合性の危うさは、愛の広汎性と取引できるだろう。他方で、プロジェクト描画に対する社会的検証の不在は、物語のプロトコルを積極的…

ARIA The ORIGINATION #13

プリマに昇格して才能問題が解決を見たのだから、負け犬のなめ合いは、loserの定義を見直さないと継続できない――われわれはどこかしら寂しい負け犬である。したがって、アリシアへ視点移動を行い、彼女の感化のリソースを灯里と釣り合うように減じねばならぬ…

島崎藤村 『ある女の生涯』 [1921]

狂気を知覚できない狂人の叙述には遠近感がないので、文芸的な愛顧を求める競合へ乗り出すには、狂気に空間的な指向性を与えるべきだ。つまり、狂人は移動せねばならぬ。そこで伴う病の昂進は物語に機能性をもたらすだろうし、人格に対する憎悪と反感に及ん…

小島信夫 『微笑』 [1954]

不具の暴力は露悪趣味でカバーされ、やがて知性が生ずれば、療養の過程はロードムービーとして物語の価値へ貢献し、凝固した肉体は官能的な戯れとして処理もされる。 倫理上のコストと技芸の交叉は、悲惨さと横柄の兼ね合いから収受されるヒューモアで、粉飾…