2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

私は、一度きりという不可逆のよろこびに、微笑した (3)

衰弱は緩慢に進んだ。近頃は昏睡することが多くなったように思う。幼女の毒は腹の中で意気揚々と代謝を続け、私を数日の内に滅ぼすことだろう。 戸外では春らしい細い雨が降っていた。時折、音楽療法のおぞましい歌声が硝子を越して耳に届いた。私は、特にわ…

私は、一度きりという不可逆のよろこびに、微笑した (2)

練馬区役所の壁面を風が渡り、先輩の長い髪は波紋のように舞った。漆黒のせえらあ服を身に纏うその形姿は寛容でいて、どことなく冷ややかだった。 「――こんど結婚するの」 先輩は振り返り、そして私のために少しだけ微笑んだ。 「ここは愛のない無感動な宇宙…

私は、一度きりという不可逆のよろこびに、微笑した (1)

幼女の爆弾で滅び去った街を抜け、幼女の毒で汚染された丘を歩いた。幼女の毒に冒された体は、鎮痛剤の悩ましい暖かさに浸り、足取りは浮遊するような軽やかさだ。 昨夜の雨に拭われた空は高く、慈愛の色を湛えながら、練馬の大根畑の鳶色をした土塊を照らし…

日記

「勤勉な無能が本気を出すと人類が滅びるから、わが輩はダラダラと過ごさねばならぬのだ」

日記

今日はニコ動に上がっていた「くぎゅうううのツンデレ百人一首」を聴きながら、陵辱される女の子を描いた。明日は早いのでもう寝る。

日野理恵

「莫迦だなあ、岡田斗司夫のやつ。こんなすばらしいものが解らなくなるなんて」 「いずれ俺たちにも解らなくなるのさ。何も解らなくなるのさ」

谷崎潤一郎 『春琴抄』 [1933]

盲目の彼女を戸口まで曳いて行って、手水の水を掛ける件だが、うっかりして、ひとりで行かせると大変になる。「済まんことでござりました」と男は声を震わせる一方、女は「もうええ」と首を振るのである。 しかしこういう場合「もうええ」といわれても「そう…