2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ロバート・チャールズ・ウィルソン 『時間封鎖』 Spin [2005]

アンソロポロジーふうの篤実さも通俗のモデルも、造形に情報が伴えばイヤらしさから多少は免れるのですから、造形描画の水準においてジャンル小説の分限を守りたくあれば、ストーリーの生成を半ば記号化した造形に頼るのはつらくなるし、そもそも人類学的篤…

カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』 Never Let Me Go [2005]

細々と放流される情報ダムは、読者の関心を事件の顛末に駆り立てることで、その想像力と競合します。もし解答が読者の想像を超えなかったら落胆が大きいのです。しかし競合そのものを隠そうとしてダムの放流を絞ると今度はストーリーが流れなくなる。隠蔽の…

地球の片隅で白いハトを飛ばす

ロマンティシズムの映像文法は、対話や振る舞いの間合いに心理の説明を託します。ダイアローグで費やされる間合いの長短が、ロマンティシズムとリアリズムを分けるのです。 リアリズム文法で作られた『仁義なき戦い 頂上作戦』('74)とロマンティシズム文法で…