2013-01-01から1年間の記事一覧

マチスモの王国 『ア・フュー・グッド・メン』とウテナの暁生さん

『ア・フュー・グッド・メン』は、ジャック・ニコルソン大佐という人間を発見する物語である。隊内の暴力制裁の実体を解明すべく、グアンタナモに乗り込んだトム・クルーズのニヤケ顔は、ニコルソン大佐の顔芸に圧倒されてしまう。わたしたちは、ニコルソン…

フィルモグラフィーの記憶錯誤 『アウトレイジビヨンド』『ジャンゴ』

虐待された文系を救うだけではまだ訴求力に乏しい。シナリオ進行を担うに足る甲斐性が彼らになければ、共感は呼びがたい。三浦&加瀬&小日向を救済した『アウトレイジ』の価値観を俯瞰すればそのようになるが、『アウトレイジ』を続編の『ビヨンド』と併置…

ワナビ地鎮祭 『桐島、部活やめるってよ』『glee』

スクールカーストは、卒業とともに解消されかねない季節ネタである。階級差が後々の人生にまで波及するような、ある程度の抽象化が行われないと、社会人ユーザーには訴求し難い。スクールカーストに端を発した『桐島』も『glee』も、やがてそれを越えた問題…

秒速五十三光年 宇宙をかけるスペルマ 『言の葉の庭』

作者が自分を投影する主人公に、ヒロインが「やさしくしないで」とすがりついてくる。女に与えた自分の感化にナルシシズムの喜びを認め、作者は打ち震える。恋にのぼせ上がるヒロインの視点は、自分の男前を上げてナルシシズムを煽るための作者のズリネタで…

宮崎あおい、アニメ声の向こうに 『害虫』

宮崎あおいはでかい。冒頭のリビングで、りょうと対座する宮崎がフルサイズで収められる。受け手は早々に、この童顔が母を凌駕しかねない体躯を従えることを否応なく知らされてしまう。宮崎が廊下を進めばフローリングは軋みを上げ、椅子から飛び降りれば地…