2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

無題

失恋に対する教訓やオリエンテーションを芸術作品に求めるのはたやすい。失恋が創作の動機となるからだ。ところが、承認欲求の充足に挫折したとき、芸術はガイドとして役に立たなくなる。 チェーホフの『わびしい話』に、才能がなく女優になれなかったヒロイ…

善意を表現する構造 グレッグ・イーガン『白熱光』

本作は、明らかに、フォワードの『竜の卵』と政治的課題を共有している。また、語り手には、そのように想定してもらいたい動機がある。実のところ、叙述トリックで課題が解決される点で、本作は『星を継ぐもの』の影響下にあるのだが、トリックである以上、…

庶民賛歌を科学する 『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』『模倣犯』

『寅次郎恋やつれ』のラストは少々気まずい。文豪の宮口精二が、とらや住人と邂逅しているのだが、両者ともまるで別の世界に住んでいるため、宮口の娘である歌子を共通の話題にしながら、ややぎこちなく対話を続けるしかない。ここにタコ社長という、更なる…

女の原風景 『言の葉の庭』

わたしが『言の葉の庭』で強烈な違和感を覚えるのは、ドコモタワーを俯瞰する超地上的なカットである。空撮で大写しになったドコモタワーのいったい何を以て、キャラの感情の振幅を表現しようとしているのか、この関連がよくわからないのである。同じ違和感…

無題

ラジオを流していると、アニメ声が聞えてくる。曲名を求めて目を上げると、Silent Siren - 女子高戦争とある。わたしは頭を抱える。アニメ声だったら何だってよいのだ。わたしの絶望をよそに、曲はサビに入る。 「あのイケメン講師を落としたい♪」 わたしは…