2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

惰行美人 『小さいおうち』

吉岡秀隆の登場場面は衝撃的だ。望遠圧縮された坂道の向こうから彼が出てくるのだが、姿を現したのはいかにもアカ崩れで芸大然とした長髪の男なのだ。マンガなのである。ところが、それに輪をかけて事態をおかしくするのが、この男に対する松たか子の反応で…

小説 仙太郎

日曜の午餐に招かれた仙太郎は方南町にあるゴシマ男爵の別邸を訪れた。先日落成した能楽師某の邸宅のことで話は盛り上がった。酔った男爵は羨望の声をあげるのだった。 「地下に能楽堂があるそうぢゃないか。まるで秘密基地だ。カッコいい」 「貴方も作った…

それでも人間でありたい 『監督失格』

この話のオカルト性を決定づけているのは、娘の部屋に現着した母親の反応に尽きると思う。娘と連絡が取れなくなって丸一日が経っている。合鍵でその部屋の扉を開いてみると、異臭が漂ってくる。 母娘は依存関係にある。彼女は誰よりも娘の身を案ずるはずだ。…