2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

その残骸はかつて美少女だった 『海街diary』

本作における長澤まさみのウエイトを考えれば、イメージビデオと見紛うような冒頭のカットがよくわからない。映画が始まると、鶏ガラのような脚を画面が舐め回す。それはかつて長澤まさみと呼ばれた美少女の残骸である。ここまで執拗に長澤の脚を舐めるのだ…

報いの技術 『サウルの息子』

タイトーのスカイデストロイヤーがすきだ。このゲームには主人公補正の不条理さがよく表れている。ゲームの中でわたしたちが搭乗するのは機銃と魚雷を無限に積んだゼロ戦である。対するF6Fは謎の火球一発を放ってくるのが関の山である。 『サウル』の画面は…

鳴動するオッサンの辺にて 『進撃の巨人』

人に挙動がなければ、そのキャラの人となりを知ることができない。挙動を引き起こすには事件が必要だ。キャラの性格造形は事件に対するその人の反応の仕方を通じて描かれる。 この理屈からすれば、冒頭の15分が奇妙なのである。謎の高原をエレン一行が遊山し…

失われた人格を求めて 『鎮魂』と『血別』

太田守正『血別』と盛力健児『鎮魂』が共有する問題意識は、渡辺芳則という人物の解明にある。盛力本は渡辺を批判し、太田本は盛力本を批判することで渡辺を擁護する。この両者は渡辺という人物の造形構築について補完関係にある。ところが、両本を参照した…

ブライダルビデオ、極限へ 『ザカリーに捧ぐ』

物語から提示される課題はふたつあるように見える。ひとつは怪物のエスカレーションの不可解さである。彼女は自らの命を犠牲にしてまで嫌がらせを敢行する。これが理解に及ばない。彼女は何を破壊しようとしていたのか。 課題のいまひとつは父親に負わされる…