2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

そして想いが残った 『秒速5センチメートル』

この物語が到達する結論には、悲惨なようでいてどこか明朗なところがある。ラストカットを構成する視座が客観的で、それが救いになっている。それまでの物語はタカキ君か花苗の視点によって担われてきた。ところがタカキ君と明理が立ち去り今や無人となった…

愚鈍たる軌跡 『リップヴァンウィンクルの花嫁』

『四月物語』の松たか子は無能の人であった。何を楽しみにして生きているのか見当がつかず、その行動の意味するところは不明瞭である。物語の進む目的や解決すべき課題が隠されるためにわたしたちは苛立ってしまい、その余波として松を無能と思ってしまう。…

好きが届く奇跡の場所 『君の名は。』

その男にとってあの女はどれほど希少な存在なのか。あるいはその女はあの男のどこに惹かれたのか。劇中にあって恋愛感情を誘発して然るべき個人の属性は、たとえば長澤まさみに関していえば記号的といえるほど露骨に設定されている。クレーマーをあしらう長…