2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

失われた記憶と分岐する人格

記憶を喪失した人物が災厄に見舞われている。その災厄は、記憶を失う以前の当人が引き起こしたものである。しかし記憶を失った彼はそれと知らずして災厄と戦っている(『ヘラクレスの栄光III』『CASSHERN』)。 記憶の継続を人格の要件と見なす立場を採用す…

三島由紀夫『雨の中の噴水』 石原慎太郎『完全なる遊戯』

恋愛の局面にあっては男は選択の主体になり難い。選ぶのは女だからだ。では男が選択の主体となるにはどうすればよいか。三島の『雨の中の噴水』は恋愛の終局に着目する。選べなくとも棄てる決断はできるはずだ。この発想がさらに倒錯すると、恋愛が目的では…