2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ジョン・スコルジー 『レッドスーツ』

冒頭から始まる劇中劇はつらい。あえて表現の水準を下げるのが劇中劇の作法である。通俗的な偶然が頻発して実に面白くない。 『ミッドナイトクロス』や『カメ止め』冒頭の耐え難さを想起したい。冒頭から始まるのはそれが劇中劇と知ってほしくないからだ。劇…

トロッコ問題再考

人は悲劇に慣れてしまう。あるいは麻痺してしまう。人死にが1名出たら不快である。1人が2人になればますます不快であるが、不快の増大量は逓減するように思われる。0名から1名の人死にが生じた際に増大する不快量の方が、1名から2名に追加されて増大する不快…

『東條内閣総理大臣機密記録 東條英機大将言行録』

Darkest Hour には車を降りたチャーチルが単身で地下鉄に乗って民情視察をやる場面がある。これは虚構なのだが、東條英機(以下ヒデキ)は実際に同じことをやっている。昭和19年4月30日。この日は日曜で玉川の私邸から官邸へ向かっていたヒデキは洗足で車を…

『ふがいない僕は空を見た』

『芋たこなんきん』の正気ではないキャスティングをわたしは思い出すのだ。徳永家の茶の間で國村隼の隣に田畑智子が妹として鎮座して微笑を湛えている。それは兄妹にはとても見えないはずなのだが、智子の童顔には人の錯視を誘いかねない、腐った果実のよう…

答え合わせ

ベン・アフレックは『アルゴ』で河原者の負い目に言及している。アラン・アーキンの扮する映画監督は娘と疎遠である。なぜと問われると彼は自嘲する。 「嘘で塗り固まった人生だからさ」 虚業の負い目が家庭問題として具現化することで当人を動機付ける。 ベ…