2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

何処にもない国

見せたいものを見せるのは野暮である。 『コクリコ坂から』の冒頭でメルは炊飯をすべくコンロを点火する。この一連の芝居の一々が、押井守のガンアクションのように、カットを割って叙述される。 マッチを取り出す。 マッチを点火する。 コンロを点火する。 …

先日、春場所中日の中継で時間係審判の話題が出たのだが

映像編集に際しては理想の間を追求すべきであるが、同時に商業作品であるから定尺というものがある。たとえば、U局ならば20分40秒。作業が進むにつれて尺は短くなっていく。このペースでやればどのくらい切れるのかすぐに見えてくる。押し気味になり、今の調…

Chekhov, A. (1887). Expensive Lessons

学位論文のリサーチのために仏語を習得することになった男は家庭教師の求人を出す。やってきたのは若いフランス娘であった。男は舞い上がるのだが、受け手であるわたしの顔は歪む。また千年一日のごとく美人に男が翻弄される物語が始まるのだ。と、それはそ…

『恋は雨上がりのように』

何たる破廉恥。何たる邪念の迸りか。こう思わされた時点で敗北なのである。不自然には罠があり、むしろ語り手は受け手がそう思うよう誘導している。しかし、これは条件反射しても仕方がない代物ではないか。 徐々にオッサンの魅力が開示されていく語り口では…