2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ボーバクたる時を超えて 『秒速5センチメートル』

明里にどうしたら追いつけるのか。秒速でタカキ君に与えられた課題である。つまり、明里の方が先に進んでいるのだが、如何なる意味において彼女はそうなのか。先回議論したように、明里はタカキ君と訣別することができた。この遠距離恋愛は不可能だと正しく…

告別の旅 『秒速5センチメートル』

秒速には『トト・ザ・ヒーロー』の影響が認められると指摘した。その際、篠原美香との破局の後に新海誠をアレを見たとなると相当効くものがあろうと空想したが、先日、久しぶりに『ほしのこえ』を見返したらトトから引用したと思われるモチーフがすでに登場…

Chekhov, A. (1888). The Bear

一幕物の喜劇である。 地主の未亡人が良人の死を悼むあまり引き籠っている。もう一生外に出ない、誰にも会わないという。そこに闖入者が現れる。男は亡夫の知人である。夫は男に借金をしていて、その返済を求めて彼は訪ねてきたのだった。 女は不快である。…

『横道世之介』(2013)

『ほしのこえ』は驚嘆すべき物語である。リリース当時とは全く異なる意味合いでわたしたちの涙腺を揺さぶってくる。 本来は結末がぼかされた話だった。ミカコとノボルの顛末は、幾分かの希望を交えながらも、作中では明らかにされなかった。ところが、今日の…

徳が凡人を追い詰める 『刺客列伝』

英雄伝に出てくる小カトーの言動は、プルタルコス当人がマンガのような人生と評するように、徳高いというよりも基地外じみていてドン引きする。むしろカトーのサイコの様な徳高さについていけなくて泣き言を漏らしてしまう周囲の人々がコミカルですきだ。 同…