2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

内面を錯視させる

『狂い咲きサンダーロード』は人の成長を観測する物語としては変則的な作りになっている。正調の成長話であれば受け手に成長の過程を明示するものだろう。『百円の恋』(2014)では安藤サクラのジム通いを受け手は観察することができた。『狂い咲きサンダーロ…

歌舞伎『人情噺文七元結』

この有名な人情噺はハッピーエンドの幸福感を増幅させるために中盤の橋の場面でサスペンス感を設け、敢えて受け手にストレスを与える。しかし予め落語で筋を知って上で歌舞伎の本作を見るとなると、そのサスペンス感は減じると考えるのが普通だろう。わたし…

『Fukushima 50』(2020)

渡辺謙と佐藤浩市の造形については何の問題もない。いつも通りやってもらえば格好はつくだろう。問題は佐野史郎である。彼の造形如何によって物語の政治観が決まってしまうつらさがある。 佐野は当初、ヒール兼コミックリリーフとして振る舞い、世間に流布す…

奉仕の放散と循環 『ルパン三世 カリオストロの城』

トラブルを抱えたヒロインに奉仕する点では、カリオストロのルパンはジェームズ・ボンドに近い。しかしボンドガールへの奉仕には下心がある。カリオストロのルパンにはこれがない。性欲のないボンドがヒロインに奉仕するのだから話は自然気持ち悪くなる。 こ…