2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ジブリから橋田寿賀子節へ

有能なキャラクターを創作するとなれば、受け手が彼を有能と認知してくれるような行動を用意せねばならぬ。かかる行動を発起させるイベントを用意せねばならない。 レディ・バーバラの性格造形は一言でいえば宮崎アニメのヒロインである。ボートでリディヤ号…

『KCIA 南山の部長たち』 The Man Standing Next(2020)

政治を儀礼化されたスリラーにするのは、政治日程と数の原理がもたらす抗争である。タイムスケジュールは正統性の調達を競う障害レースを設定する。日程は事件を物化するためのハードルである。体制が違えどこの手の政治スリラーは再現可能だ。たとえば『ス…

できることしかできない:ヘーゲルの場合

正義の具体的な内容を問われても、正義としか言いようがない。正義はひとつしかないからだ。現実は多くの事情からなっている。多様な現実に呼応して多様な道徳のふるまいが生じる。道徳が分岐すれば義務の対立が生じかねない。何か行動を起こせばある義務が…

狂女考 『セーラー服と機関銃』『二代目はクリスチャン』

薬師丸ひろ子も志穂美悦子も共に狂女でありながら、作中でたどる狂気の軌跡は逆である。前者は狂気を理解する物語である。後者は理解不能になる。 薬師丸は初期相米のヒロインたちと同様の、天然ゆえにリスク選好に走ってしまう一種の狂人である。佐藤允、三…

あまりにも下士官的な

副長のブッシュはある意味で諦念の人である。分を知ってクヨクヨするよりも、能力内で何ができるか実務的に追及したい人である。 彼には敵の出方を推論する能力がない。フランス語もホイストも球面三角法もみな、自分には無理な課題と分類している。決りきっ…