2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『ラスト・ラン / 殺しの一匹狼』 The Last Run(1971)

スコットは声がいけない。声の軽さがいぶし銀の外貌と釣り合わない。この話では声の軽さが技術職の実存の問題を例化している。運び屋のスコットは請負であって犯罪の主体ではない。軽薄なトニー・ムサンテは憎悪を誘ってやまないが、この若造には犯罪の主体…

アマル・エル=モフタール & マックス・グラッドストーン 『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』

ノーラン映画の来す不安感といえばいいか。喚情要素がことごとく空回りして、創作の難しさを訴えかけてくる。 敵同士が文通の形で邂逅する。交渉を重ねるうちに相思相愛になる。イヤな上司に文通を気取られ、罠を張るよう強いられる。相手は罠を見抜くも、そ…

オリンピック雑感

野球を最初から最後までまともに見たのは四半世紀ぶりじゃないか。この間、事実として打撃と投球のフォームが変わっているのだが、わたしの方も昔に比べれば物の見方が多少は細かくなっている。フォームが異なって見えるのは、挙措の詳細が見えるようになっ…

『花束みたいな恋をした』(2020)

性格の一貫性について不審な点は間々ある。別れを切り出す土壇場になって、冷め切ったはずのふたりが感情を取り戻してしまう。それだけ盛り上がる余力があるなら、別れる理由が消えかねない。あえて回想で盛り上がるのなら、別れた後に持ってくるのが定石の…