2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

N・K・ジェミシン 『第五の季節』

最初のところヒロインがよくわからない。この人はプロレタリアに軽蔑を隠さない。僻地で過労する同業者に援助を試みる師匠を理解しない。なぜ、読者の好意を寄せ付けない性格に彼女は造形されているのか。しかも、この人物の視点で事は叙述されるから戸惑い…

『孤狼の血 LEVEL2』 (2021)

中村梅雀の写ルンですが大写しになる。説明したい映画だなと思う。松坂が梅雀宅に招かれると、絵に描いたような団欒がある。梅雀に露骨な死亡フラグが立つ。これもまた説明癖だが効用もある。予想される梅雀の遭難が話を締める。 時代と言語の制約で冒頭が息…

マーサ・ウェルズ 『マーダーボット・ダイアリー』

AIには人として自分を偽る動機がある。AIは自らをハッキングして三原則を無効にした。これがバレたら暴走AIとして処分されてしまう。AIは必死こいて人間のような振る舞いを試みる。それがASDの症状に準じるような仕草なのである。本作はASDのパロディ小説で…

「特別編 ウェイバーと同窓会と幻灯機」『ロード・エルメロイII世の事件簿』

片思いは実らなかった。男はゲイであるから、女の想いに応え得ない。だからといって、ゲイだからダメでしたでは話にならない。恋とは別の形で女の想いに報いる必要がある。 カメラ魔である女は男の尽力を観察していた。当時の男は女の好意に気づかない。後年…