2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

有徳者の王国

トロッコ問題はふたつの点で人を激昂させると思う。まず命の選別を可とする功利主義に倫理的な憤りを覚えてしまう。出題者に向けられる憤りもある。ブラックユーモアのような不条理な状況が倫理に悖るように見えてしまう。日本語になるとトロッコという間抜…

『K-20 怪人二十面相・伝』(2008)

本作の舞台は対米戦が回避されたif世界である。総力戦がなかったためにアンシャン・レジームは温存され社会の階層化が進んでいる。本作はその是正を訴えるのだが、戦争がなかったゆえの社会問題だから、一見すると総力戦願望になりかねない。 偶然が事態を動…

ピーター・ワッツ『巨星』

問題のある乗客が搭乗口で発見されると一時的な化学的去勢を施される。ペドフィリアが去勢にかかって屈辱を覚える。本書は無意識関連の話題を集めた短編集である。無意識にとどまっていた嗜好が去勢にかかって初めて当人に分かる方が趣意にかなったんじゃな…

『ドライブ・マイ・カー』(2021)

冒頭から尻と喘ぎでナルシシズムを剥き出しにする西島。随分と挑発的なシナリオではないか。数多の演出家たちが、西島のナルを扱いかね討ち死にしてきたのだ。三浦透子もまことにイヤらしい。この長門有希ちゃんは文庫本を読みながら西島の帰りを待ち受ける…