2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「第15回 足固めの儀式」『鎌倉殿の13人』

認知の不協和は絶えず感知される。上総介が頼朝を武衛と呼ぶたびに不安を掻き立てられる。上総介は同輩のつもりで頼朝をそう呼んでいる。頼朝はリスペクトだと解しているが、上総介のタメ口と武衛の尊称には矛盾がある。頼朝の中でこの認知的不協和はどう合…

『運命の逆転』 Reversal of Fortune (1990)

ジェレミー・アイアンズの犯意をぼかすためにこそ、彼の内面は受け手に開かれている。内面が駄々洩れならば犯意も明るみになりそうだが、その思い込みが逆に犯意の隠匿に用いられる。内面が明らかなキャラだから犯意はないに違いない。 しかしながら、隠し事…

柔いトロッコと自滅するナルシシズム

武装勢力のリーダーを狩るべく、米軍はSEALsの偵察チームをアフガン東部の山岳地帯に派遣する。チームは山羊飼いと遭遇して選択を迫られる。もし山羊飼いを解放すれば、武装勢力に通報される恐れがある。しかし捕虜を取る余裕はない。山羊飼いは解放され結果…

クリストファー・プリースト『隣接界』

ふたつの矛盾する原理が物語を運行している。オスの辛み問題がある。オスとしての自信を失った男がいる。他方で根拠なきモテがある。偶然の作用で格上のメスにモテてしまう。理由なきモテはポルノであるが、オスの辛みは持続し男のクヨクヨは止まらない。 相…

『好きだ、』(2005)

作者の邪念に迎合するように宮﨑あおいは媚びに没頭する。それが媚びになりそうでならないのは、徳なのか何なのか。この人の視線は内包する媚に突き動かされるように一定しない。不安定な願望が内容のないショットをどこまでも持たせてしまう。 『害虫』の塩…