2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ちょっとムカっとしただけ

遠い過去の自分に対して行われた不正には、時間を戻せない以上、対応する術がない。それはわれわれには自由にならないものであり、したがってわれわれの責任のないものであり、もはや関係のない事象である。にもかかわらず、立腹してしまう。あるいは変えら…

訣別のための成熟

初のオフ会である。やってきた長澤まさみは様子がおかしい。ニタニタしながら男の躰を触れ回り、媚び声で容貌を褒めそやす。ギャルゲの白痴ヒロインそのままである。これは何であろうか。長澤の媚びは森山未來への好意に基づくのか。それとも彼女は単なる痴…

三島由紀夫『午後の曳航』

スタローンのエクスペンダブルズは消耗品であることのタフさを称揚するのであるが、それ以上にこのタイトルは、消耗品であると自覚できることに特権性やノーブルさを見出している。そう思えるためには何らかの精神性が必要なのである。男なら死ねと江田島平…

エイドリアン・チャイコフスキー『時の子供たち』

蜘蛛星人のパートを司馬文体で叙述してしまい、文中に顔を出して解説してしまう作者に、邪推をすれば心の揺れを覚えてしまう。蜘蛛星はナノマシンの強制注入で無理やり発展させられた実験社会であり、蜘蛛だから女性社会である。体長がメスの半分しかないオ…

『ちょっと思い出しただけ』(2022)

恋愛の発端から終焉までカバーした『花束みたいな恋をした』(2021)と比較していい。『ちょっと思い出しただけ』は破局の契機が明確である。池松壮亮は怪我でダンサーを続けられなくなった。『花束』には破局に至る決定的なイベントはない。それだけに、破局…