2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

パオロ・バチガルピ 『ねじまき少女』

工場で使役する遺伝子改良ゾウが暴走して処分される。ホク・セン(中国系マレー人)が北米人の上司アンダースンの挙動を観察評価する体裁で事件の後始末が叙されていく。 ホク・センはアンダースンを洋鬼子扱いしている。マンダリンを解さない北米人の目前で…

大塚久雄の重商主義

福岡と熊本の県境。豊前街道沿いに肥猪と呼ばれる町がある。明治の初め、父方の実家はこの地で醸造を営んでいたのだが、幼少のわたしは家のルーツを聞いて戸惑ったのだった。肥猪は1970年代に電話が開通したような何もない僻地である。醸造のような産業が成…

哀切のアイロニー

男と楽しく会話を交わす園みどり(可愛い)を街頭で目撃した武田鉄矢はガッカリする。傷心の武田が飲み屋の暖簾をくぐると女将が倍賞千恵子で、これは如何にも出来過ぎていてギョッとする。園は薄幸の女である。実家のリンゴ園は破綻。両親も他界。 武田は嘆…

物証から誤誘導する 「#14 それぞれの時効」『LAW & ORDER:性犯罪特捜班 シーズン1』

時効を迎えようとする連続レイプ事件に進展があった。事件の直前、被害者の周辺に怪しい男が出没している。被害者の一人に心当たりの人物を尋ねると女は口ごもる。犯人は赦した、もう忘れたい、このまま時効になってほしいと発言を拒む。女は事件後、クエー…

フラストレーションとサスペンス

桜花抄の序盤を思い起こせばよい。金融一家にムサビ臭い男女が生誕した。虚業を嫌う一族から男女は孤立し連帯する。殊に男子は兄弟に加虐され、女は庇護の役回りを担う。階級脱出の定型であり、やがて男女が互いの才能に動揺を覚える点に変奏がある。バトル…