佐藤允の安心感

 佐藤允を映写幕に認めると、これはもう何とかなるのではないか、と大船に乗れる。戦記物によくあるような、たちまちの内に員数外を調達してくるスーパー古参兵の安心感である。
 ところが、実際に何とかなってるかというと、あんまりどうかなっていない。『青島要塞爆撃命令』とか『戦国野郎』ではどうにかなって安堵の一途だったのだが、『太平洋の翼』や『血と砂』ではどうにもならない。『太平洋〜』で渥美清と組んだコント路線は重爆の物量に耐えきれないし、『血と砂』の板前佐藤は、大陸戦線でやや楽勝かと思われたのに、八路軍の人海に飲まれてしまう。
 いずれも、技能に支持された楽観が、後々になって事態の深刻感を逆に表現してしまう。佐藤允を以てしても、どうにもならないことになった、という情緒がある。
 敗戦国映画を活劇として処理しようと試みた、60年代の風景なのだろう。