『風林火山』――相変わらず亀治郎の顔はえろい

 閨で刃物を振るう柴本幸を、最近の亀治郎には珍しく、彼は過激な顔面操作で迎え撃つ。説得の内容そのものは「独りでいることをやめたら、かえって独りになってしまった……」とか何とか、恥ずかしい台詞禁止的な直截なものにすぎないが、これが一杯一杯の歌舞伎演技だから、かかる歌舞伎のフォーマットがこの青臭い言説を担うに適した形態なのかどうか解らなくなり動揺を覚える。
 情緒のカウンターバランスは時系列にも設定されていて、久しぶりに目を剥いた亀治郎とドキドキすると、今度は男前なえろ顔に及び、柴本が腰砕けになる。