風林火山 第26回

 あの愛くるしいお屋形様が、暗黒面に墜ちてしまわれた。
 亀治郎がやりすぎる程に、つまり情緒の表出が過大になるほどに、かえって情報は水準化しステロ化して内面は見えなくなる。ただ他方で、いったんは閉鎖された内面は、板垣や甘利によってしつこく注釈されることから解るように、実のところ、われわれに対して積極的に隔離されている訳ではない。では誰に向けて、というと、亀治郎自身に隠蔽されてたのだ、というオチが来る。型にはまった口上は身体の自動化で、自分で自分が解らなくなる。日中、呻り声を張り上げてた彼は、「今は負けるのが怖いのだああ」とふしどで柴本幸に泣きつく。