バリントン・J・ベイリー 『時間衝突』 Collision with Chronos [1973]

Collision With Chronos

 『禅銃』('83)が海洋型のオリエンタリズムだとすれば、『時間衝突』は大陸型のそれだ。封建社会武装民に事欠かない前者にあって物語が問題とするのは、行使の規整にかかわる倫理であるし、対して、基本的に文治主義を指向する大陸型の後者は、非常時に際し非武装文民が採りうる方策を語りたがる。これは、たとえばチャウ・シンチーの物語を参照すればわかりやすく、つまり、会社員がいきなり超人化して戦わねばならぬ用件があり、かかる間隙を合理化するような仕組みが欲しい。あるいは逆に、かかる間隙に条理のなさを積極的に見出して歓楽を語るのもありだろう。


 前に『SW』のジェダイが緊急展開部隊のイメージに被ると指摘したが*1、あの世界のオリエンタリズムを配慮すると、ウェーバーが想定するような、大陸型の集権的な家産官僚制を考えてよいかも知れない。万里の長城以降、少なくとも数世紀は北方からの圧力が西に逃げてしまったので、自然経済で土着の武装民を養わねばならぬ封建制は必要なく、軍隊は少数の特殊軍的な規模にとどまるといった、あのイメージである。