Can the War on Terror Be Won ?

Gordon, Philip H., 2007, Can the War on Terror Be Won? How to Fight the Right War


Foreign Affairsより。以下、要約。


    テロとの戦いは新しいタイプの戦争である。テロリストをいくら捕殺しても終わらない。むしろ、そのイデオロギーが無効化されたとき、あるいは、もっと見込みのある形で彼らに尊厳やチャンスを得る手段があれば、それは終わるはずだ。 冷戦の経験から教訓を引き出せるだろう。冷戦も普通の戦争ではなかったし、また、ほとんどの人がその終焉を見通せなかった。しかし、かつて世界中の人びとを沸かせた共産主義は失敗と見なされるようになり、80年代の半ばになるとレーニンスターリンの後継者たちはもうダメだと悟ったのだ。ビンラディンの後継者が同じ結論に至ることも、それほど想像に難くはない。ビンラディンは洞窟で逃亡生活を送り、その活動も資金源も劇的に減少している。イスラム教徒の中にはアルカイダの過激な暴力に対する反発の兆しもある。ヨルダン市民の世論調査によれば、ヨルダンのホテルが自爆テロの標的となったとき、ビンラディンを支持する人びとは25パーセントから1パーセント以下へ落ち込んだ。 もちろん、テロとの戦いアルカイダに尽きるものではない。中東の政治経済的な停滞やさまざまな紛争が抑圧を産み、テロリズムをもたらしている。しかし、グローバリゼーションや通信技術によって中東の経済発展が促進し、民主化の原動力となる中産階級が育まれる余地も大いにある。アラブ世界でインターネットにアクセスする世帯は2000年以来、5倍に増えている。 しかし、冷戦がそうであったように、道のりは長いだろう。必要なのは、冷戦を終結させた忍耐と決意であり、テロに代わる夢と希望を相手にもたらす政策である。徴兵制を復活させ、GDPの4割を費やし、いくつかの主要国を占領することが正しいやり方ではない。それは、脅威に過剰反応するのではなく、自分たちの価値観や社会に自信を持ち守ることにある。あらゆる潜在的な攻撃を見越した政策はテロリストの跋扈を許すよりひどい結果になるだろう。 時間と経験にともない、そしてわれわれが適切な選択をすれば、イスラム教徒自身がその原理主義に反旗を翻すだろう。イスラム世界のどこかで、新しいワレサアンドレイ・サハロフヴァーツラフ・ハヴェルが現れ、人びとの未来を取り戻し、学問の偉業を遂げた寛容で誇らしいあの時代の再興を模索するだろう。彼らはゴルバチョフのようにやって来るかも知れない。あるいは、1989年のブダペストやグダンスクやライプツィヒのように現れるかも知れない。われわれに強さと分別と忍耐があれば、彼らはやって来るだろう。そしてイスラム世界のみならず、われわれの世界をも変えることだろう。