青き空想は淫猥なるメタボ腹を越えて 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』

礼子のミー(巨大茶トラ)に突っ込みを入れるキムタクがくどくて、「ねこ?ねこ!」と二度も言う。あえて何気なく流す方が、異文化の香り漂うというか、映画の自律性が高まったのではないかと余計なことを考える。どうしても我慢できないなら、少しギョッとさせるだけで済む話で、本当に驚いた人間があんな記号じみた芝居するとは思えないし、何よりも品がない。もともと演技も造形もマンガに走りがちな語り手なのだが、三丁目の小日向だけは怪我の功名で、割り切りすぎた人物像が彼のぶきみをよく表していた。



この猫は『ハゲタカ』の龍平の巨体茶トラと同一人物だろうか。龍平の茶トラと称されるペットモデルには行き当たったものの、写真を見ると思ったほどメタボではない。違うのか、それとも近年膨張を遂げたものか。



***



昨今、山崎努マイブームが勃興しつつあって、劇場へ足を運んだのも、努のコスチュームプレイ劇を期してのことだった。この辺は、礼子に余命を尋ねる努の口ぶりが伊丹映画のそれになるに及んで、十分に報われたと思ってる。



しかしながら、佐渡酒造の女体化が、宇宙放射線病をおして乗艦する努の迷惑な責任感に、よこしまな意味合いを与えるのは否定できない。病床での伊丹モードがやはりツボで、礼子は特殊関係人であり、努が地球に本妻の宮本信子を残してきたことがうかがえる。キムタクがミーを殊更に糾弾するのも、彼はあのふたりの関係をメタボ猫の淫猥な曲線から無意識のうちに感じ取ったのだと思う。当のキムタクもワープ中にメイサと事に及ぶのだが、これは結果的に子作りだったということで、語り手の中では正当化されているようだ。