『断作戦』

文芸寄りの『断作戦』に『パンツァータクティク』のような戦場の解像度を求めるのは筋違いであるし、『ペリリュー・沖縄戦記』のような生活観察も期待できない。戦況が既知外なため帰還兵の記憶が断片化している。また戦況図もついてないから、何が進行しているのかよくわからない。それでも騰越城の北東まで後退すると、ビジュアルが整理されてきて風景が見えやすくなる。拉孟の入り組んだ地形より、城壁で限定された市街戦の方が、絶望の図解化はやりやすい。



帰還兵物とは言えるだろう。しかし、ハリウッド映画ほど帰還兵の心理に悲愴な執着がない。というより戦場との距離感を受け入れようとする。ポール・ハギスだとWWIIの『星条旗』ですら、この時間を受け入れない。過去と現在を錯綜させて、とりあえずベトナムにしてしまう。『断作戦』の穏やかな時間の受容には、『星条旗』のラストのようなロマンティシズムはないが、抑制は抑制でひとつの感動の技術だろう。