ループを実感したい 『魔法少女まどか☆マギカ』


イベントを繰り返すほむほむには、動機を醸造する事件の厚さがある。ほむほむ視点で見る限り、まどかも事件を繰り返すのだから、ふたりは事件の厚さを共有しているような錯覚が出てくる。しかしまどかにとって事件は常に初見である。



まどかに経験の蓄積があるかのような錯覚は誤算ではない。むしろ客には積極的に錯覚してもらいたい。時間の冗長さの担保がない彼女の決断は、衝動的な自殺願望に見えてしまうからだ。



自分が知識でしか知らないループについて、まどかは決断の直前に言及せねばならない。ループの副次的な効果として、彼女の身体に経験の蓄積が認められるとQBは述べる。感情の錯視という危うい渡り船にまどかの行動の合理性を乗せてしまった不安感は感情の瑕疵を繕おうとするが、まどかの継続しない記憶をそれだけで乗り越えるのはむつかしいと思う。彼女にとっては、それらは知識でしかない説明台詞に過ぎず、そこに命を賭そうとするのはやはり不自然だろう。