補完される機能的色彩

叛逆航路 (創元SF文庫)
 劇中の人物が自分の正体を知る叙述文学の公式は、その冒頭において、自分が何者か知らないがゆえに当該のキャラクターから機能的色彩が欠落することがある。それは受け手のいら立ちを誘いかねない。
 『叛逆航路』はバディ物であるが、キャラクターの無能さが誘う苛立ちを緩和すべく、機能的色彩を担う別のキャラクターが当座のしのぎとして準備され、したがって相棒物となる。自分の正体をしらない人物が相棒の感化によって起動する点で、それは依存と感化の相棒物である。
 この公式でいうと、『バトルアスリーテス大運動会』の冒頭は無能なヒロインが相棒に依存する物語である。やがてヒロインは自分が何者かを知る。その段階でこの相棒物は、ヒロインとそのバディの力関係の逆転に着目する。ヒロインの視点で相棒に依存する物語を叙述してきたそれはバディの視点に移行して、天才が目前に現前したときいかなる態度をとり得るかという課題を提示する。