第17話 「making the dream」『アイドリッシュセブン』


 新人賞を獲得したアイドルたちが舞台で祝福を受けている。舞台袖からその模様を観察していたマネージャーの紡が感極まる。これが紡の最後の登場カットである。歓声にかき消されるように彼女の嗚咽は聴こえない。歓声の渦に圧され消え入りそうな、置き去りにされたかのようなか細さだ。紡がアイドルたちを観察する体裁で端を発したこのシリーズは、ここに至り彼女から当事者たることをはく奪している。
 分水嶺はちょうど中盤にあった。8話のナギとの絡みと9話の王様ゲームの件は、紡を明らかに性愛の対象として扱っていた。ところが、アイドルたちの自己実現に話が傾斜すると、男女の優越をめぐるいつものトレードオフらしきものが現れる。ゲームが性愛から自己実現に移行すると、紡は物語の視界から外れてしまう。だが、聴こえない嗚咽は聴こえないからこそ何事かを以てわれわれを惹きつけてしまう。他人に夢を託す属性としての母性の哀切が抽出されているのだ。