『復讐者に憐れみを』


 職人の意気地がアマチュアを糾弾する。ペ・ドゥナを滅ぼしシン・ハギュンを捕獲するのはソン・ガンホの電気工学であり、同じくハギュンに一矢を報いるのは臓器業者のメスさばきである。しかし、彼らの意気地は反アマチュアにとどまらない。それは若者憎悪でもあり、究極的には女性嫌悪に到達する。
 殊更に無頼を装うペ・ドゥナは、プライドの高さゆえに自分が美人であることを活用しようとしない。美貌は彼女に由来するものではないからだ。敢えて聾唖のハギュンと番うことで美貌活用の否定を誇示するのだが、いずれにせよ彼を人扱いしないことには変わりがない。ペ・ドゥナに襲いかかるガンホの電気工学は、容姿を浪費する美女のその高慢に報復するとともに、彼女の願望をも叶えてしまう。美女であることがガンホには通用せず、女は対等の人間として扱われるのであり、そこで初めて、女は女であることを活用しようとする。だが、無意識にせよ、すでにそれは活用されていたのだ。女の死後、ガンホはどう見ても童貞のオッサンらの凶刃に斃れる。ペ・ドゥナがオタクサークルの姫のような感化力を振るっていたことが確認されるのである。