フレデリカの野望

 プラトンの対話篇でたとえばグラウコン兄弟あたりが「さすがです!」「ゼウスに誓ってそのとおりです!」と目をキラキラさせ始めると、彼らに乗せられたソクラテスが「いいかいユリアン」モードに移行することがしばしばある。対話劇の舞台は濃厚な少年愛社会だ。したがって、プラトンから田中芳樹を連想してしまうと、ヤンとユリアンの間に肉体関係を想定せねばならなくなる。
 そもそも独身男性に児童の養育許可を出してしまうトラバース法がアナクロすぎる。猫ですら単身者による引き取りはむつかしいというのに。
 田中は童貞だからユリアンとヤンの肉体関係に直接は言及しないが痕跡はある。フレデリカに寄せるユリアンの恋心がそれである。これは史実ではヤンを奪った彼女に対する嫉妬であり憎悪である。
 愛童家のヤンにはフレデリカは興味の埒外であった。しかしフレデリカの野心は彼を放っておかない。このエル・ファシルの英雄は遠からず政界入りを果たし、若くして最高評議会議長に就任することだろう。あわよくば、自分もヒラリー・クリントンに。...
 フレデリカは淫行条例違反を暴露するとヤンを脅迫し結婚。その野望はヤンの遭難によって意外な形で達成される。イゼルローン共和政府の首班である。しかし、ユリアンが、あの憎らしいこわっぱが革命軍を抑えている。かくして、イゼルローン要塞→バーラト星系をめぐる血みどろの政争が勃発するのであった。


配役

1966年大映(モノクロ・シネマスコープ・200分休憩あり)