クラスメイトBさんに頼みごとをされた話

 午睡中、高校生になっていたわたしはクラスメイトBさんに頼みごとをされた。家に来て本棚の組み立てを手伝ってほしいと乞われた。
 彼女はわたしの隣に座ると、わたしの膝に手を置き、家の場所を教えるべくグーグルマップを開いた。「手をどけて呉れ給え」とわたしは声を荒げた。斯様な見え透いた色香の発露に堕ちる童貞野郎と見られたことに屈辱を覚え、まことに童貞らしい反応をしたのである。
 Bさんがプンスカして立ち去った後、教室にいた役所広司にどうすればよかったのか尋ねた。
 「引き受けても断っても、どちらも本物のお前だ」
 その役所広司は如何にも役所広司の言いそうなことを述べた。
 下校中、わたしは考えた。もっと経済的に割り切って応じればよかったのだろうか。
 本棚を組むのは労働である。その対価として、旦那衆の芸者遊びのように、女の色香を享しむ。ただそれだけの話ではないか。
 いずれにせよ、これはよいはてな埋め草になったわいとほくそ笑んだところで夢は醒め、これはよいはてな埋め草になったわいとほくそ笑んだ。