ファミコンウォーズ(FC)のオニギリジマ

 オニギリジマは3面に出てくる序盤マップであるが、最終マップより手こずったと評する人がいるほど難解であり、ゆえに奥深いマップでもある。
 オニギリジマは群島であり、敵陣とは海で隔てられている。艦船は使えず、ヘリで歩兵を送り込む以外に敵島を占領する術がない。つまりヘリボーン作戦を再現したマップだ。
 フォークランド紛争のロジスティック本を読んだ際、思い出したのがこのオニギリジマである。オニギリジマのヘリボーン作戦は現実に当てはめると、いかなる規模なのか、どれほどの損害が生じるものなのか、わたしは知りたくなった。
 Logistics in the Falklands War: Behind the British Victory規模や損害を現実に比定するに当たっては、まず、1ユニットの部隊規模を確定する必要がある。大戦略ならば1ユニット=1個中隊である。車輛や機体は1ユニット10輌で兵員ならば100名で1駒が構成されていると考えられる。ところがファミコンウォーズでは兵員を他ユニットで輸送する際に、1駒=中隊に矛盾が生じる。1駒のヘリ残機が10機であろうと1機であろうと兵員1駒=1個中隊100名を運べてしまう。
 そこでまず兵員1駒は10名の1個分隊であると想定する。機体と車輛の1駒は1機1輌で、駒を構成する機体数は単機の損傷の度合いと考える。駒内の残機が5輌だろうと2輌だろうとだろうと1輌と見なすのである。戦艦1駒が10隻という不条理の最たるものもこれで解消される。そもそも戦艦というのはおそらくフリゲート艦だろう。また1ターンは1日ではなく1時間とする。更にこの規模に見合わせるために、自走砲は迫、爆撃機攻撃機と見なす。
 損害計算のためにカウンターも作った。運用面でも現実に則するべく、3割損害や弾薬切れでユニットを後退させるようにした。

 FC版には初期配置が基本的にない。したがってクリアせねば彼我の投入戦力が確定されない。結果は以下の通り。

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 守備側の戦力は歩兵1個中隊に2個戦車小隊が増強されているイメージだろうか。装甲車も2個小隊弱配備されているので、この歩兵は半ば機械化されている。これに2門の迫、つまり1個迫撃砲小隊が支援をしている。歩兵と迫のこの比率は現実の編成に忠実である。
 攻撃側の歩兵は440で、つまり1個大隊のヘリボーンが1個増強歩兵中隊に襲いかかかったことになる。戦力比から言えばこれは決して無謀な作戦とは思えないのだが、ギョッとする結果が出ている。死傷者241名で大隊が半壊、つまり攻め落としたものの、攻撃側もほぼ全滅判定である。21ターン程でクリアしたので、1日でこの損害となると、シュガーローフの海兵隊もかくやという惨状になる。守備側の2個戦車小隊が相当効いているのであり、ヘリボーンという現代の騎兵の脆弱さがよく表現された結果となった。ヘリの損耗も凄まじく、守備側のSAMが効いている。
 本来ならば、攻撃機によって戦車を排除せねばならないのだが、攻撃機が支援に飛来したのは作戦開始から10時間ほど後。しかもSAMがいるのでまずこれを排除せねばならない。
 SAMをつぶすのは厄介だったが、その煩雑さに如何にも戦争という感じが出ていた。攻撃機をSAMの射程外に待機させ、数がそろった段階で一斉につぶしにかかる。SEADが簡潔に表現されておるなと歎じた。