ラジオ英会話考

昨今、食器洗いのお供にBBCワールド愛聴してきたのであったが、折り悪くプレミアリーグの実況に当ってしまうと、サッカーには門外漢のこちらには訳が分からず、果たして勉強になるのか不安になる。そこでラジオ英会話を聴くととして、余った時間をBBCに振向けることにした。


NHKラジオ 英会話タイムトライアル 2021年 12月号 [雑誌] (NHKテキスト)こうして英会話タイムトライアルのジェニー (Jenny Skidmore) たんの萌え媚び声にうつつを抜かす日々が始まったのであるが、この萌え媚にもこれはこれで不穏を覚えるのである。先週の寸劇でそれが爆発した。


場所はNYのスケートリンクである。ジェニーたんはそこのスタッフである。冒頭で講師のソレイシィが「ジェニーたんがアイススケートを教えてくれる」と煽ってくるから、例によって「ワンコくん迎えに来たよ」的な昂奮に包まれた。ところが現われたのは、NYアクセントを大坂のオバハンライクに形態模写する何かなのであった。


ジェニーたんは演技に走ることがある。通常は本編も寸劇も萌え媚で通すのだが、偶に演技に走ると、同一性の危機でタイムトライアル萌え豚派に試練を与えてくる。


数か月前、薬剤師を愛想悪く演じて萌え媚びを隠匿した彼女が、わたしの胃に不快感を走らせた。これが地ではないか? あの萌え媚びこそ演技ではないか? そりゃアラフォーが始終あのテンションだったらつらいものがある。しかし……


ジェニーたんの萌え媚の極北。それはソレイシィの笑話に反応して時折発せられる「えへへ」である。これが本当にマンガのような「えへへ」であり、あまりにもマンガで媚びが見え透いているから、この人は真性の萌え媚びではないかと思わせてしまう迫力がある。


スケートリンク回もショックから立ち直って何回か聴いてるうちに、NYアクセントの隙間からジェニーたんのカケラが発見されてくる。well~アハァとか It's almost Christmas! とかこれはジェニーたんだ!


萌え媚びの余地を下手に残すから、余計に苦しい。


同じジェニーたんでもビジネス英会話の Jenny Silver たんは、本編でも寸劇でもキャラがブレない。基本的に萌え媚びではないが、油断してはいけない。


先週、アメリカではでかいトレーラーで家を丸ごと運んで移築すると自分で解説しながら、その巨大感に気圧されたのか「ふふふ」となかなかの萌え声で笑う。今週は、在米時代に日本製ビデオゲームを嗜んだと自嘲気味な萌え声で笑う。


しかし、ビジネス英会話はなんといっても寸劇である。タカシとマイケルのBL文学である。ホモソーシャルといえばそれまでだが、萌媚に苛まれることなくいつまでも皿を洗っていられる。


先々週、渡米したタカシはシアトル現地支社のマイケルとついにオフラインで絡むこととなった。たちまちBLは深化し、タカシ→タカ→あげくにbrother とマイケルの馴れ馴れしさはヒートアップする。


この寸劇、シアトルで宅地開発する話である。娘に焚きつけられた地主が引っ越さないと駄々をこね始め、大家の家を敷地内の別の場所に移築する案をマイケルはタカシに提示する。築50年の家を移築できるのか。訝るタカシにマイケルが誇らしげに American made, my brother. Long span. と諭す。with Canadian woods とタカシに出鼻をくじかれると「フン☆」と拗ねる。カワイイ。


このBL文学に今週は大家の娘が切り込んできた。これがアニオタという地獄のような設定で、彼女を Jenny Silver たんはやや薄弱気味に演じ、まったく収拾がつかなくなってきたのであった。