名寄防御シナリオ『Command: Modern Operations』

www.youtube.com 名寄の地形は、戦闘の様相もスケールも違うのだけど、田原坂を連想させる。丘に挟まれた狭隘を抜けないと熊本平野へ入れない。その丘の一つが田原坂台地である。田原坂の戦いとは丘をめぐる戦闘なのだ。

名寄の地形も同様で名寄市内の手前が隘路になっている。ここを抜けないと旭川に至れない。このシナリオでは隘路の手前に連隊戦闘団(3個普通科中隊と戦車中隊)が布陣し、ロシア軍の2個自動車化歩兵大隊と戦車大隊を迎え撃つ。それぞれには砲迫の支援がある。戦力比は3倍である。戦闘は、1個普通科中隊を引き換えに、1時間も経たずにロシア軍壊滅という信じがたい結果となっている。

戦闘の経緯は以下の通り。


まず2個自動車化歩兵大隊が並走して襲来する。これらは渡河したところで壊滅。戦車大隊が川の手前に到達したのはおよそその10分後。この戦車大隊30両強は5分ほどで全滅した。

視聴後に違和感を覚えた。素人の直感では装甲の厚い戦車から先に突っ込ませたい。なぜ歩兵大隊が先陣を切る必要があるのか。ロシア軍の教範がそうなっているのだが。

戦車大隊が単独で普通科中隊にぶつかると、対戦車兵器に阻まれるおそれがある。まず歩兵大隊が普通科中隊と交戦しこれを拘束しているうちに、戦車大隊をねじ込ませる。

アドバンスド大戦略の初期マップを解説する際、この方策には言及した*1。歩兵を使って敵部隊を誘導拘束して隙間を作り、そこに機甲部隊を突っ込ませるアレである。

名寄の戦闘ではロシア軍の歩兵大隊の交戦が始まったら、間髪入れず戦車大隊をねじりこむべきだった。ところがこの実況では戦車大隊の現着が遅すぎる。

おそらく1個旅団を運用するには地形が手狭なのだろう。そのうえ隘路の手前が川に遮られている。橋を渡るために縦隊で進まなければならず、その分、後続との距離が空く。しかも渡河の前から火力に晒されされつつ、渡河後、交戦しながら横に部隊を展開させねばならない。

陸自側から見れば戦力比に悲壮を覚えるのだが、ロシア側に立てば、また違う絶望が見えてくるだろう。