仮文芸

現代邦画とSFの感想

2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

嬌飾された偶然 『ライク・サムワン・イン・ラブ』

この老人に訪れるオスの試練には段階があり、その階梯の間にはタメとしての踊り場がある。中盤での加瀬亮との接触がそれで、メスをまるで扱えない童貞然とした老人が加瀬へ人生の教訓を垂れ始め、オスとしての甲斐性をようやく発揮する。 ただし不穏なのであ…

六平直政 怨念の箱舟 『復讐 運命の訪問者』『マルタイの女』

『運命の訪問者』は異能者の連帯とその芸が継承される物語である。哀川翔と六平直政は『CURE』の役所広司と萩原聖人の相似である*1。 『運命の訪問者』は六平直政の生き様と死に様の物語だ。六平にはモンテーニュが言及するようなローマの偉人の徳がある。恐…

景物の誘い 『人生スイッチ』『蜘蛛の瞳』

自らの過ちが原因とはいえ、反社会的人格の搭乗する車を煽ってしまった男は『激突!』の状況に追い込まれてしまてしまう。 ここで状況を観測しているのは、もちろん追われる男の方である。彼を襲撃する反社会的人格の視点には言及がない。内面が明かにされる…