2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『イエスタデイ』 Yesterday(2019)

ビートルズなくとも歌謡曲が現行の形になり得たと想定するのならば、ビートルズの影響を過小評価することになりかねない。ビートルズなくともそれを踏まえた楽曲群が存在する世界にビートルズを持ち込んだとしても、劇中ほどのインパクトをもたらせるのか。…

泣訴する父権

所有権とは処分権である。自分が作ったものは自分が処分していい。自殺が禁忌とされるのは、自分は自分の創作物ではないからである。自分の出生に自分は関与していない。自分には責任がない。責任がないから恣にしていいと考えたくなるが、所有権の概念は逆…

『ミスター・ガラス』 Glass(2019)

最初に筋を運ぶのは卑小な感情にすぎない。女性精神科医(サラ・ポールソン)が妄想狂のオッサンたちを収監する。この図式では、キャリアに対するノンキャリの憎悪と女性に対するオッサンの嫌悪が援用され、受け手はサラの退治を願望するよう誘導される。加…

『宮本から君へ』(2019)

前髪ぱっつんのアニメ声。挙措の全てが媚び媚びしい蒼井優が言い寄ってくる。歩く地雷である。その女はいかん早く引き返せと念じていると、さっそく井浦新の闖入に見舞われる。池松壮亮も井浦も女の地雷性を認識している。そのアニメ声がたまらんと身もだえ…

マージョリー・キナン・ローリングス『仔鹿物語』

母は否定から入る人である。隣人に取引を持ちかけようとする夫に、ぼられるのが関の山と冷淡に応じる。息子ジュディが遅く帰宅するたびに不機嫌になる。狩に出ようとする夫ペニーとジュディを難じる。曰く「男ってのは何かっていうとつるんでほっつき歩きた…