軍事

期待理論とリスク選好

二つの選択肢を仮定する。Aを選べば$40の利益が確定する。Bならば50%の確率で$100の利得。さもなければ利得はない。社会心理学の実験に基づけば、多くの人はAを選ぶ。期待値はBの方が高い($50)にもかかわらず。 いま一つの選択肢を仮定する。Aを選べば$40の…

現場の馬鹿力

米と開戦せずに蘭印を攻略する英米分離論の可否について、米側はどう考えていたのか。マーシャルがルーズベルトに提出した勧告案には、英蘭領への攻撃には参戦で対応すべきとある。他方、スチムソンは真珠湾当日の日記で次のように述べている。英領を日本が…

未来の耐えられない重さ

offensive school のジョゼフ・ジョフルが1911年に参謀総長に就任する。そこで出てきたのがドイツに対する先制攻撃案。劣勢をオフセットするには先攻するしかないとジョフルは考える。予防攻撃案にはひとつの問題があった。ベルギーの中立を侵しその平野部を…

名寄防御シナリオ『Command: Modern Operations』

www.youtube.com 名寄の地形は、戦闘の様相もスケールも違うのだけど、田原坂を連想させる。丘に挟まれた狭隘を抜けないと熊本平野へ入れない。その丘の一つが田原坂台地である。田原坂の戦いとは丘をめぐる戦闘なのだ。 名寄の地形も同様で名寄市内の手前が…

コーカサス - アドバンスド大戦略

東部戦線で完勝を続けると、モスクワからウラルを経て最終的にコーカサスへ到達する。これらのマップはいずれも包囲戦がテーマになっていて、内周する陸上部隊と連動して空挺部隊を外周させることになる。現在のコーカサスはホットスポットだ。時事ネタとし…

ウラル - アドバンスド大戦略

モスクワ4pzにおいてカリーニンからヴォルガを渡河してモスクワを後背から襲うとなると、マップの制約から、史実から見れば不可解な事態が生じてしまう。前に触れたとおり、ゲームでは何の抵抗もなくモスクワ運河東岸に沿って南下できる。モスクワはマップの…

モスクワ4Pz - アドバンスド大戦略とタイフーン作戦の実際 

モスクワ4pzで迂回や包囲を試みていると、しみじみと戦争をしているような気分になる。わたしは必ずしも熱心な大戦略ファンではないのだが、現代戦の大戦略やファミコンウォーズでは、迂回・包囲がこれほど明瞭には表現されないのではないか。この辺は史実に…

ロードするのかしないのか

『砂と霧の家』(2003)のジェニファー・コネリーは警官と不倫する。アルコール依存症の彼女は警官の銃で自殺を試みるが、トリガーは引けど弾は出ない。警官のベレッタはマニュアルセイフティでロックされている。 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)で…

ファミコンウォーズ(FC)のオニギリジマ

オニギリジマは3面に出てくる序盤マップであるが、最終マップより手こずったと評する人がいるほど難解であり、ゆえに奥深いマップでもある。 オニギリジマは群島であり、敵陣とは海で隔てられている。艦船は使えず、ヘリで歩兵を送り込む以外に敵島を占領す…

佐々木春隆 『B29基地を占領せよ―10個師団36万人を動員した桂林作戦の戦い』

迫を越える火力に40年代冒頭の国府軍が支援されることは少ない。日本側にとっては「山砲があれば負けない」状況であり、迫をアウトレンジする山砲の支援で突撃してしまえば、あとは爆煙の晴れた高地に日の丸が翻るパターンが多い。しかし、創作の観点からす…

超時空参謀・辻ーん、ならびにキャラの淘汰圧を不可視化する話 佐々木春隆『長沙作戦』

『長沙作戦』の佐々木春隆は思わぬ場所で辻ーんと遭遇している。南京の派遣軍総司令部に申告したところ、総司令官と総参謀長に続いて訓辞をしたのが、辻ーんその人であった。佐々木はその様子を「怪漢が演壇に躍り出て熱弁を振るい始めた」と記している。中…

AD大戦略の生産概念

Kampfgruppe×1を200〜300機が支援するようなAD大戦略はAllies的だ。およそ釜山橋頭堡の2倍くらいの密度と言えるだろうか。もちろん、どれだけ爆装させるかにも因るし、補給金欠問題という留保はあるが。 あの生産という不条理な概念を後方からの補充と解せば…

弾薬節約主義が迫撃砲を好まない話

迫の待ち伏せに遭遇する連隊本部の話が『華中作戦』に出てくる。陸大の教官歴があって作戦指導も華麗な連隊長はそこでテンパってしまい、近くにいた著者の中隊に迫の制圧を命じる。 迫の発射と弾着の間に20秒あれば2km、という計算になるらしい。待ち伏せの…

『プライベート・ライアン』を再考する

『プライベート・ライアン』は「ガーランドとトンプソンの神話」をクリアするためにあれはあれで頑張ったのではないか、と先頃考えた。 +++ 去年の春だったか、MD版のアドバンスド大戦略に突然狂った自分は東欧に侵攻し、破壊の限りを尽くした。この衝動…

鳥居民 『昭和二十年 第一部 (5) 女学生の勤労動員と学童疎開 【4月15日】』 [1994]

理工系の学生と違って法文科は前線送りだからイヤだ、とは前に触れた。商科だったら短現で主計科に行って、造兵部の火工工場に配属されちゃうかも、ということも触れた。そこで勤労動員の女学生にモテまくるにちがいない。霞ヶ関の会計課に勤務する手もある…

小林源文的な解

戦車大隊の本部中隊などをお話に使えば、個別のドンパチが戦術的な見通しと効率的に併走できる。情報将校や当直将校が大隊長車の砲手だったり装填手だったりするからだ。

大戦略VのMLRS運用

大戦略VのAHはAAGやMANPADSにある程度の抗甚性があるので、高射特科の支援があるとしても、AHの襲撃が予想されるとこちらの地上部隊を迂闊に動かせなくなる。AHを排除するには空軍の支援が必要だ。逆に、こちらがAAGやMANPADSの想定下でAHを使う場合、いくら…

10年ぶりに大戦略Vを引っぱり出す

押入から大戦略Vを引っぱり出した。XPでも一応動いた。 今回の目的は、諸中隊をCT単位に振り分けて運用すること。特に、CTごとに専属の輸送中隊を作り、所属のCT以外になるべく補給を行わせないようにする。編成については前に述べた。戦車大隊を基幹として…

Can the War on Terror Be Won ?

Gordon, Philip H., 2007, Can the War on Terror Be Won? How to Fight the Right War Foreign Affairsより。以下、要約。 テロとの戦いは新しいタイプの戦争である。テロリストをいくら捕殺しても終わらない。むしろ、そのイデオロギーが無効化されたとき…

効果の疑わしいBMDにも出番はあるかも(米国限定)

Lieber K A. & Press D G., 2006, The Rise of U.S. Nuclear Primacy 現状、ロシアの早期警戒網はボロボロなので、米国の第一撃が着弾する前に彼らが報復できるか疑わしい。ロシア側としては、先制攻撃をかろうじて免れた残り物で反撃せざるを得ないが、その…