2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

おしんの非戦論と外貨の天井

おしんのパシフィズムとその裏返しである辛辣な国家観を評価するのはむつかしい。市場主義者おしんにとって近代国家は商売の邪魔にしか見えない。統制経済下で彼女の魚屋は配給所でしかなくなり廃業を強いられたのだった。 国が市場を損なったと難じるおしん…

『サマータイムマシン・ブルース』(2009)

この映画の醸すセクシャリティは曰く言い難い。舞台原作であるから、ただでさえ舞台調の現代邦画ジャンル物演技がとどまるところを知らず、躁々としたその芝居は薄弱の人々を思わせる。しかし樹里と真木よう子は冷めていて舞台調の芝居をやらない。男優たち…

器質としての宿命

『砂の器』のリメイクがまことにうまくいかない。本家が達成した宿命の感じがリメイクの諸作あっては薄くなっている。加藤嘉にとってハンセン病は自分の責任ではなかった。つまり『砂の器』は責任のない事態への対峙を宿命と定義している。渡辺謙の2004年版…

守れなかった

ニューシネマの挫折感がすきだ。殊に『いちご白書』のそれがたまらんのであるが、しかし不思議なのである。『白書』は学生運動が頓挫する話であり、講堂に立てこもった学生たちが警官隊に排除されて終わる。特に人死にが出るわけもなく、ニューシネマ基準か…