仮文芸

現代邦画・SF・経済史

2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ラヴィ・ティドハー『ロボットの夢の都市』

景物の情報量には一般文芸のようなコストがかかっている。社会経済の設定がその精密度に追いつきそうもない。現実の社会経済を参照して景物を克明にできる社会時評の利点はときに仇となる。ヒロインの収入は母の介護料に大半が消え、スキマバイトをかけ持ち…

石炭を食う 19世紀イギリスの食料事情

近世におけるイギリスの人口動態の特徴は、経済成長に比べ人口増が抑制的だった点にある。この間、イギリス国民の栄養状態は改善していったのだが、19世紀に入りふたたび人口が増加に転じると食料事情は悪化した。経済成長は栄養や健康の改善に貢献できなく…

『8番出口』(2025)

このカップルの顛末はもはや動かしがたいであろう。たとえ一時的によりが戻ったとしても、二宮の稼ぎでは小松をつなぎ留められそうもない。結果が同じであれば脱出の試みに意味がなくなる。 映画の能天気なルッキズムは出てくる女たちをことごとくキャピキャ…

背徳の大芸術

タカキくんと明里はなぜ疎遠になったのか。公式解釈では岩舟と種子島の距離に想いが阻まれたとされているが、これはタカキくんの異常心理を説明しきれていない。心が離れたのならば明里の幻想を見るまでにガンギマる訳がなく、花苗にもあれほど不感症にはな…