2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

マイクル・ビショップ『時の他に敵なし』

卑近の課題で場を持たせる手管は機能している。関連しない状況にモチーフを共有させる手管も認められる。序盤を持たせるのはスペインの貧民街のサバイブ劇である。この手の卑近の課題は石器時代編の大半を支配する。乾期に貧窮させることで石器人類の群れに…

原罪の創生

喋血雙雄(1989)の結末は呉宇森の異常性が発揮された最たる場面である。現職警官に投降者を射殺させてしまう。その際、ダニー・リーがサイコ扱いされることはない。フレームは彼の顔に寄り、むしろ受け手は彼に移入するよう強いられる。 前に言及したが、ダニ…

「第38回 時を継ぐ者」『鎌倉殿の13人』

北条一家はまことによくわからない。事が済んでしまうと、自分たちの殺害すら目論んだ義母を相手に、政子も義時も団欒を再開できてしまう。夏目雅子は「美しいロシア」と書くことができなかった。書けないからこそ、ロシアをどれだけ愛していたか証明された…

ギョッとした話

『ちょっと思い出しただけ』(2022)の池松壮亮には行きつけのバーがある。店名は「とまり木」、マスターは國村隼である。序盤でバーが初出の際、カウンターの向こうに鎮座する國村を認めてギョッとした。むろん、池松はギョッとしたりしない。この世界の國村…