仮文芸

現代邦画とSFの感想

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

選択なき徳性 『ペンギンズ・メモリー 幸福物語』

この話には幼少のころ不可解を覚えたところがある。マイクはなぜジルの求愛にこたえようとしないのか、これがよくわからない。今見返してみると、この辺の心理は明瞭に伝わってきて、戦争で壊された帰還兵が、仕事ができるという徳性を失った結果、恋愛がで…

春を売る声 『言の葉の庭』

『劒岳 点の記』の宮崎あおいの芝居には強烈な印象が残っている。夫の浅野忠信に対する宮崎の品の作り様が場違いも甚だしく、演出意図に疑問を感じざるを得なかった。おそらくは真性の童貞である木村大作が宮崎の魔性に取り込まれてしまったのだ。 『言の葉…

いつも見ている 『春の日は過ぎゆく』

『春の日は過ぎゆく』のラストは一見したところ病的だ*1。失恋した男は河原へ赴き、過去の甘い日々を追想するかのように微笑する。直前の場面で、男は女と再会している。女はよりを戻そうとするが、男にはもはや女に惹かれるところがない。人間よりも、かつ…

童貞の恋愛決戦主義

岡田斗○夫は、ひとつの個体に執着することを交尾機会の損失だと考えている。異性を口説く際、5分で決めてくれと岡田は相手に迫る。この方略には、雄の自尊心を温存できるメリットもあるだろう。交尾相手の候補が他にあることを示唆することにより、自分が希…

教官マーク・ストロング 『キングスマン』

庶民性がエグジーとサミュエルの両者によって担われる点が、事を複雑にしていて、この場合、かかる複雑さにあまり旨味がない。文化資本の否定をやりたいのであれば、サミュエルのいかにも成り上がりな風体が話の理念の邪魔になりかねない。しかも、エグジー…