仮文芸

現代邦画とSFの感想

2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

双方向サイコ 『教授のおかしな妄想殺人』

イレギュラーであるのは、モノローグのかたちでホアキンとエマの内語がそれぞれ二人とも開示されている点で、さらに内語の内容も奇妙なのである。エマはホアキンを話題としている。ところがホアキンの方は殺人の話題で一杯で、エマがあまり出てこない。通常…

大杉漣、魂の座 『CURE』

大杉漣がいちばんえらい。久しぶりに『CURE』を再見してそう確信した。 大杉漣登場の会議室の場面は衝撃である。ヘアスタイルとメガネだけで話は喜劇に堕ちかかる。その通俗の塊のようない出立ちで萩原聖人に立ち向かってゆくのだから、してやられるのは確実…

宿命を知る 『ちはやふる』

広瀬すずは美人である。最初のつまずきはそこである。劇中でも美人であるとはっきり言及されていて、彼女の課題設定に負の影響を及ぼしている。美人の時点で課題が消失しかねない。このことは語り手も自覚していて、美人であることを無効にするための描画が…

激録オッサン密着24時 『現金に手を出すな』

事情あって『現金に手を出すな』を再見した。初見時は学生であったわたしは寝落ちしてしまって、どんな話か今まで解らないでいたのだった。今回見返してみて、あまりのおもしろさに驚いた。 本作が叙述するのは24時間+αのオッサンの行動であり、省略されてい…