仮文芸

現代邦画とSFの感想

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

死者に自分を奪われる

ミッドウェイ(2019)とID4リサージェンス(2016)に淀む湿っぽいセクシャリティは何事であろうか。オネエ顔のエド・スクラインがスペルマの飛沫のような曳光弾をかいくぐり飛龍の航空甲板の日の丸目がけて250kg爆弾を投じる。飛龍撃沈の引き換えに戦傷したスク…

『渚のシンドバッド』(1995)

田舎に隠遁した浜﨑あゆみを男どもが追う場面は、ギャルゲの懐かしい感じがした。各方面に影響は与えたのだと思う。この浜崎はおそらく『放浪息子』の千葉さおりの原像でもあるのだろう。今更ながらそういう学びがあった。 しかし悲痛な設定の割には慰藉の余…

後期フィヒテ

カントの宇宙観にあっては正義はひとつしかないとされる。人それぞれに正義があるとは考えられない。この正義の充足に人は自由を覚えるとカントはいうが、これがわからない。正義を行うのに際し選択の余地がないのなら、やることはひとつしかない。それは自…

はるき悦巳の映画術

『じゃりン子チエ』の2巻にチエがテツと映画館に足を運ぶ話数がある(「文部省選定映画の味方の巻」)。映画のタイトルは文部省選定『僕はまけない』。作中では映画の一場面が劇中劇として挿入される。 幼少のわたしは『チエ』の中でも殊にこの話をヘヴィロ…

キラキラする人

フォレスターの『スペイン要塞を撃滅せよ』(1952)はホーンブロワー物としては構造が変則的である。通例、ホーンブロワー物はホーンブロワーの内語を通して事態を追っていく。ところが『スペイン要塞』には彼の内語が出てこない。扱われるのはウィリアム・ブ…