仮文芸

現代邦画とSFの感想

2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

フィリップ・K・ディック 『暗闇のスキャナー』 A Scanner Darkly [1977]

人格の継続性が完全に絶たれてしまえば、当人は継続性の欠損を認識することができない。したがって、この場合、継続性の途絶から語られる情緒は、当人以外の、継続性を保ちうる外部の視座から語らねばならぬ*1。他方で、あくまで記憶を損なう当事者の視角を…

花沢健吾 『ルサンチマン (4) 』 [2005]

男の中に機能的な身体が発見されて、love at once が発現してしまう過程は、ごく基本的な作劇の作法に留まるものであり、では、かかる機能的な描画とは如何に、という先々回の議論*1につながるものだ。われわれには、何か機能的なる性質に好意を抱いてしまう…

タニス・リー 『銀色の恋人』 Silver Metal Lover [1981]

ふたりの機能性を競合させて、比較的に劣った機能を貶めるとする。これが、歓楽劇の標準的なテンプレであることは理解されるのだが、実際にかかる語りを運用するとなると、何を以て彼を機能的と描き得たのか、知らねばならぬし、反対に、どんな行動を以て語…