2014-01-01から1年間の記事一覧

今度は意味がある 『刑事追う!』と『藁の楯』

もともと、扇沢延男脚本を目当てに『刑事追う!』を見始めたのだが、その扇沢脚本の初回が4話目の「陰画」である。前にあらすじを紹介した。次のような陰惨なはなし。 男の妻はふたりの娘を残して夭折していて、その娘のひとりも強姦殺人の被害者となり、こ…

届け電波 『ほしのこえ』と『秒速5センチメートル』

『秒速』のOne more time, One more chance は、その詩の明確さゆえに、キャラクターの心理に強固な拘束を課すことになる。タカキ君、明里、花苗、三者三様の心理がそこでモンタージュ展開されるのだが、この三人を包括するには、詩がタカキ君の心理に寄り過…

わたしたちはズリネタではない 『秒速5センチメートル』

雪中の両毛線に閉じ込められてしまったタカキ君。明里との約束の時間はとうに過ぎてしまった。タカキ君は焦燥する。その吐露の内容がまことに彼らしい。 「あかり、どうか...」 この場面を見ていたわたしは、「待っていてくれ」という願望の台詞が後つづくも…

スペルマ・タイド・ライジング 「コスモナウト」『秒速5センチメートル』

あのH-IIの打ち上げ場面をイメージだと誤解する人がいるらしい*1。「コスモナウト」は宇宙開発とは関連のない青春恋愛劇である。そこに、1分弱8cutを費やしてロケットの打ち上げを挟み込むのだから、場面が本筋から浮きかねず、カテゴリーエラーと採られても…

あの神秘は俗物だった 『言の葉の庭』

はなざーという人はわかりやすい。 タカオ君とのファーストコンタクトに際して、作者は、タカオ君の襟に校章を認めたはなざーをぎょっとさせている。この演出は一見して野暮ったい。伏線が伏線であることをはなざーの驚愕が説明するのだが、説明されたものは…

恋愛決戦架空戦記 『大都会 闘いの日々』

『大都会 闘いの日々』は四課物でありながらも、その印象は薄い。各話完結のマル暴話をまとめ、シリーズの一体感を作るのは、渡と篠ヒロコの、公安物のような協力者の工作プロットである。 篠ヒロコはヤクザの情婦で、渡に進んで情報提供する。渡は危険だと…

佐々木春隆 『B29基地を占領せよ―10個師団36万人を動員した桂林作戦の戦い』

迫を越える火力に40年代冒頭の国府軍が支援されることは少ない。日本側にとっては「山砲があれば負けない」状況であり、迫をアウトレンジする山砲の支援で突撃してしまえば、あとは爆煙の晴れた高地に日の丸が翻るパターンが多い。しかし、創作の観点からす…