2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『牯嶺街少年殺人事件』 A Brighter Summer Day (1991)

台湾撤退というエクソダスが前提としてある。敗戦して島に逃れた男たちはマクロ的に集団去勢されている。大人の事情とは別に少年たちをミクロな去勢が次々と襲う。少年は進学に失敗し、友人に女を寝取られる。歌謡曲をソプラノで歌う少年は生来的に去勢され…

ジョー・ウォルトン『わたしの本当の子どもたち』

求婚を受けるか否かで女の人生が分岐する。それぞれの人生を並行して鑑賞する趣向である。結婚した分岐ではカトリックの夫の保守的な家庭観に女は束縛されキャリアを失う。夫は妻の知性を徹底して否定してくる。そもそも子育てに忙殺されてキャリアどころの…

スペルマは天城峠を越えて

「やさしくしないで」はかなしい。花苗の想いは男の何かに届きはした。背後で打ちあがるH-IIは射精の暗喩である。ところが、届いたからこそ少女は想いが絶たれたと知る。発射されたスペルマは自分には向かってこない。天空を目指して飛び去ってまった。男は…

『SR サイタマノラッパー』(2009)

モブからメインに至るまで、造形の出力する情報量は膨大である。低廉な絵の質感がこれを受け止められそうもない。貧しくなるほど郊外の情報量は豊穣になる。青年らはその背景に埋もれようとしている。郊外の情報量とは無秩序の産物である。そこから逃れるべ…